東京の家族信託・相続相談窓口 遺言書を残さないで亡くなると・・(2)
2.お世話になった人にお礼をしたい
Aさん82歳(被相続人)は長男夫婦(長男Bさん 妻Cさん)と一緒に住んでました。
Aさんは介護状態であり、Cさんがお世話をしていました。AさんはCさんにとても感謝してました。
長男は3人兄弟です。
妻のCさんは最後までAさんのお世話をしました。Aさんは最後に「Cさん、本当に最後まで世話をしてくれてありがとう」と言いました。
長男以外の兄弟は最後までほとんど顔をみせることはありませんでした。
Aさんが亡くなりました。
お葬式が終わった直後、兄弟二人が
「兄さん、親父の遺産、兄弟均等で分けような」と言ってきたのです。
「そんなわけないだろう、俺たち夫婦は長年親父の世話をしてきたんだぞ!お前達はほとんど顔も見せなかったじゃないか。均等なんて不公正だろう。」
「そんなこと言ったって、親父は兄さん達に特別感謝なんかしてなかったんじゃないのか。その証拠に遺言書残してないだろう。遺言書がなければ俺たち子供たちは均等に相続できるよう法が定めてるんだよ。俺達にはその権利があるんだ。」
親父、なんで遺言書残してくれなかったんだ。
俺たちに対して何も気持ちなかったのか、少なくともCには何かしら気持ちを表してくれてもよかっただろう。
Bは悔しい思いでいっぱいです。
遺言書を残さなかったAさん、本当に長男夫婦に感謝してなかったのでしょうか。
違います、Aさんは長男夫婦にとても感謝してました。他の息子たちよりも多く財産を残したいとも思ってました。
ではなぜ遺言書を遺さなかったのか、それは一緒に暮らしている長男には何もしなくても全て財産を相続できると思ってたから、ほかの子供たちがこんな主張をしてくるとは思ってなかったからです。
これは家督相続の考え方です。
家督相続とは、原則として長男が単独で相続するこになり、配偶者や他の親族に相続権はありませんでした。
この家督相続の考え方は今でもそう思われてる方がいます。
家督相続までの極端な考え方ではないですが、長男がほかの子供たちより多く相続するのが当たり前だと。自然だと。
今回のケースではAさんは、わざわざ遺言書を作成しなくても、自然と長男が多く相続できると思っていたのです。
それが慣習だと。
Aさんはちゃんとご自身の想いをちゃんと形に遺しておけば、こんなことにはなりませんでした。形というのが遺言書になります。
Bさんは納得がいかず、なにか方法はないかと、必死にネットで検索してみると、寄与分という言葉ができきました。
寄与分とは被相続人の介護や生活支援、事業支援などでお世話をしたり、支えたりした場合は、法定相続分よりも多く相続財産を受け取れる制度です。
ただし、この寄与分を請求できるのは、法定相続人だけです。
Cさんは寄与分を請求する権利がありません。
Cさんの場合はCさんの寄与をBさんの寄与と同視して、Bさんの寄与分を認めてBさんの相続分を増加させることができます。
Bさんは寄与分の制度を使って弟たちよりも多く遺産をもらうことができるな。
Bさんは安心しました。
ただ寄与分の制度を使うのはとてもハードルが高いのです。
被相続人が遺言書を残してない場合は、相続人全員での遺産分割協議で決めないといけません。
寄与分を認めることは他の相続人の相続分が減額されるので、まず他の相続人が認めることはないでしょう。
遺産分割協議で決まらない場合は、家庭裁判所に申し立てをして、解決を図ることになりますが、寄与分の立証はとても難しく認められないケースがほどんどなのです。
今回のBさん夫婦の場合も寄与分を請求するのはものすごく難しいでしょう。
被相続人Aさんはまさこんな結果になるとは、こんなことになるなら遺言書を残しておけばよかったと、心底思うはずです。
想いは心の中で思ってるだけでは意味がありません。伝わりません。
ちゃんと形として残しましょう。
寄与分の制度は2019年7月から制度が変わります。